俳句575第七回「切れ字って何」勉強会

俳句575第七回「切れ字って何」勉強会

~~~角川「俳句」7月号~「切れ」の正体~参考~~~~

 

今年の角川「俳句」七月号に「切れ」の正体という大特集がありました。読み応えがあり面白い内容だったので参考資料に挙げたいと考えます。

 

この特集の中で正岡子規は「切字など論ずるは愚の至り」「切字とは文法上の語にあらで、意味の切るる処をいふ」といい特に論じていないとあります。又、「や」はゆるみ易いとも述べています。けれども実作の現場では、有季定型と同じく歴史的な慣習としてとらえ多くの俳人に使われています。

 

この特集では切れの反則として、良くない例と言われている切れの使い方を、逆に効果的に使った名句を上げています。

 

例えば「目に青葉山郭公初鰹・・・素堂」この句は三段切れと言われる反則です。「青葉」「山郭公」「初鰹」季語も三つある季重りですね。名詞による三段切れで、逆にリズムが良く視覚、聴覚、味覚に訴えかけて躍動感に満ち溢れています。

 

その他に「降る雪や明治は遠くなりにけり・・・草田男」この句があります。「や」と「けり」の切字を二つ重ねて使っていますね。この句は草田男の代表的な名句でもあり、暗唱されるほどの句ですが、それでも切れ字が2つ使われています。この句も反則ですが効果をもたらしています。

 

これまで参考としてきた奥の細道では「あらたうと青葉若葉の日の光・・・芭蕉」この句は切れ字のない句ながら名句として有名な句ですが、「なんと尊いことだろうか青葉も若葉も日の光に輝いていることだ」という解釈となります。日光東照宮の句ですね。中七の緑の木々の葉の濃淡を季重りでありながら、一つの表現で「青葉若葉」と言っている。そこが反則ですが斬新な名句です。

 

このように「切れ字」のあるなしはもはや句のリズムを整えたり内容を推敲したりする際にはあまり関係ないと言って良いと考えます。芭蕉の昔から子規に至るまで、すでにこの慣習的な俳句の実作のコツは、やはり必要がないと言っても過言では無いくらいです。

 

実際に作句に当たる場合にも、語調を整えるために良いと言われたり、品格を感じると言うような表現を良くされますが、たった十七文字の世界でそう言えるのかどうかは疑問に感じます。レトリック的な技法で古典的なリズムを作り出してしまうだけに陥り易いです。

 

今回は、芭蕉の句と同様に俳句の基本と言われる有季定型が写生句と同じような俳句の構想の根底にあるとして考えても、むしろそのような基本型であっても「切れ字」は必要が無いと考えて良いです。そうした冒険を試みた句にこそ名句が生まれる場合が多いと言って良いと思いました。

 

「切れ字」こそ現代の俳句が古典化する一つの要因ではないかと私は考えます。現代俳句ではこうした「切れ字」に対するこだわりはすでに感じられませんが、実作の現場では、まだまだ慣習的にあるものとして指導されていることが多く見受けられます。これは残念なことです。もっとたった十七文字の世界に生きた作者の内面を詠み込むことへの努力が必要とされるべきだと私は考えます。

 

勉強会資料2021・11

「奥の細道」より切れ字のチェック一覧

 

1草の戸も住み替る代ぞひなの家

季語   ひなの家

切れ字  ぞ

 

2行春や鳥啼魚の目は泪

季語   春

切れ字  や

 

1●3あらとうと青葉若葉の日の光

季語   青葉若葉

切れ字

 

2●4剃捨て黒髪山に衣更・・・・・曾良

季語   衣更

切れ字

 

5暫時は滝に籠るや夏の初

季語   夏

切れ字  や

 

3●6かさねとは八重撫子の名成べし・・・・・曾良

季語   撫子

切れ字  「べし」助動詞終止形

 

7夏山に足駄を拝む首途哉

季語   夏山

切れ字  哉

 

8木啄も庵はやぶらず夏木立

季語   夏木立

切れ字  ず

 

9野を横に馬牽(ひき)むけよほとゝぎす

季語   ほととぎす

切れ字  よ

 

10田一枚植て立去る柳かな

季語   柳

切れ字  かな

 

11卯の花をかざしに関の晴着かな・・・・・曾良

季語   卯の花

切れ字  かな

 

12風流の初やおくの田植うた

季語   田植

切れ字  や

 

13世の人の見付ぬ花や軒の栗

季語   栗の花

切れ字  や

 

14早苗とる手もとや昔すのぶ摺

季語   早苗

切れ字  や

 

15笈も太刀も五月にかざれ帋(かみ)幟(のぼり)

季語   五月

切れ字

 

4●16笠島はいづこさ月のぬかり道

季語   さ月

切れ字

 

5●17桜より松は二木を三月越し

季語   桜

切れ字  「越す」動詞連用形。

 

6●18あやめ草足に結(むすば)ん草鞋の緒

季語   あやめ草

切れ字

 

19松島や鶴に身をかれほとゝぎす・・・・・曾良

季語   ほとゝぎす

切れ字  や

 

20夏草や兵どもが夢の跡

季語   夏草

切れ字  や

 

21卯の花に兼房みゆる白毛かな・・・・・・曾良

季語   卯の花

切れ字  かな

 

22五月雨の降のこしてや光堂

季語   五月雨

切れ字  や

 

7●23蚤虱馬の尿する枕もと

季語   蚤虱

切れ字

 

8●24涼しさを我宿にしてねまる也

季語   涼し

切れ字  「なり」助動詞終止形

 

25這出よかひやが下のひきの声

季語   ひき

切れ字  よ

 

9●26まゆはきを俤(おもかげ)にして紅粉の花

季語   紅の花

切れ字

 

27蚕飼(こがい)する人は古代のすがた哉・・・・・・曾良

季語   蚕養

切れ字  哉

 

28閑さや岩にしみ入蝉の声

季語   蝉の声

切れ字  や

 

 

29五月雨をあつめて早し最上川

季語   五月雨

切れ字  し

 

30有難(ありがた)や雪をかほらす南谷

季語   雪(夏だが残雪を詠んだ句)

切れ字  や

 

31涼しさやほの三か月の羽黒山

季語   涼し

切れ字  や

 

10●32雲の峰幾つ崩て月の山

季語   雲の峰

切れ字

 

33語られぬ湯殿にぬらす袂(たもと)かな

季語

切れ字  かな

 

34湯殿山銭ふむ道の泪かな・・・・・・・・曾良

季語

切れ字  かな

 

35あつみ山や吹浦かけて夕すゞみ

季語   夕すゞみ

切れ字  や

 

11●36暑き日を海にいれたり最上川

季語   暑き日

切れ字

 

37象潟(きさかた)や雨に西施(せいし)がねぶの花

季語   ねぶの花

切れ字  や

 

38汐越や鶴はぎぬれて海涼し

季語   涼し

切れ字  や

 

39象潟や料理何くふ神祭・・・・・・・・・曾良

季語   祭

切れ字  や

 

40蜑(あま)の家(や)や戸板を敷て夕涼・・・・・・・・低耳(みのの国の商人)

季語   夕涼

切れ字  や

 

41波こえぬ契ありてやみさごの巣・・・・・曾良

季語

切れ字  や

 

42文月や六日も常の夜には似ず

季語   文月

切れ字  や

 

43荒海や佐渡によこたふ天河

季語   天河

切れ字  や

 

12●44一家に遊女もねたり萩と月

季語   萩と月

切れ字

 

45わせの香や分入右は有磯海

季語   わせ

切れ字  や

 

46塚も動け我泣声は秋の風

季語   秋の風

切れ字  け

 

47秋涼し手毎にむけや瓜茄子

季語   秋涼し

切れ字  や

 

13●48あか〱と日は難面(つれなく)もあきの風

季語   あきの風

切れ字

 

49しほやしき名や小松吹萩すゝき

季語   萩すゝき

切れ字  や

 

14●50むざんやな甲(かぶと)の下のきり〲す

季語   きりぎりす

切れ字

 

51石山の石より白し秋の風

季語   秋の風

切れ字  し

 

52山中や菊はたおらぬ湯の匂

季語   菊

切れ字  や

 

15●53行〱てたふれ伏とも萩の原・・・・・・曾良

季語   萩

切れ字

 

54今日よりや書付消さん笠の露

季語   露

切れ字  や

 

55終宵(よもすがら)秋風聞やうらの山

季語   秋風

切れ字  や

 

56庭掃きて出ばや寺に散柳

季語   散柳

切れ字  や

 

57物書て扇引さく余波(なごり)哉

季語   扇

切れ字  哉

 

58月清し遊行(ゆぎょう)のもてる砂の上

季語   月

切れ字  し

 

59名月や北国(ほくこく)日和(びより)定なき

季語   名月

切れ字  や

 

60寂しさや須磨にかちたる浜の秋

季語   浜の秋

切れ字  や

 

61浪の間や小貝にまじる萩の塵

季語   萩の塵

切れ字  や

 

62蛤のふたみにわかれ行秋ぞ

季語   行秋

切れ字  ぞ

 

「奥の細道」内の句の番号 ●は切れ字がないと思われる句の番号

 

 

「奥の細道」にある句の内の「切れ字」について

 

切れ字「や」の数が二十九句もある。・・・・・・上五に多く使われている。

切れ字「けり」はほとんど無いと思われる。

切れ字「かな」は八句。・・・・・・・・・・・・下五に使われている。

切れ字の無い句が十五句。

※切れ字が無いと思われる十三句+2句(也「なり」「越し」は切れ字ではないとする。)=十五句。