【芭蕉の詠んだお正月の句「新年」】
春立つや新年ふるき米五升
「新年」で探したところ芭蕉38才のころのこの句しかありませんでした。
江戸時代は立春がお正月だったことが良く解りますね。そこで、「餅」の句を探してみました。
餅雪をしら糸となす柳哉
餅を夢に折結ふしだの草枕
餅花やかざしにさせる娌(よめ)が君
誰が聟(むこ)ぞ歯朶に餅おふうしの年
煩(わずら)へば餅をも喰はず桃の花
鶯や餅に糞する縁のさき
やはり「餅」の句となるとお正月らしいですね。「餅」は季語としては冬ですが、それでも現代では春の季語とされている言葉との季重なりが目立ちます。
初春先酒に梅賣にほひかな(しよしゆんまづさけにうめうるにほひかな)
「初春にまず酒を飲み、梅を買う。その香りが心地よい」という意味になります。しかし、この句は、単に酒と梅の香りが混ざり合うことを表現するだけでなく、新しい年の始まりに、人々が心を新たにし、希望に満ちた気持ちで新しい一年を迎えることを表しています。
幾霜に心ばせをの松かざり
古畑や薺摘行男ども
二日にもぬかりはせじな花の春
よもに打つ薺もしどろもどろ哉
元日は田ごとの日こそ戀しけれ
やまざとはまんざい遲し梅の花
元日や猿に着せたる猿の面
蒟蒻にけふは賣かつ若菜哉
蓬莱に聞ばや伊勢の初便
一とせに一度つまるゝ菜づなかな
むめがゝにのつと日の出る山路かな
初日の出の習慣は、日本古来のものであるようなのですが、明治以降に盛んになったと言われています。芭蕉の句にも「日の出」とあり「初日の出」とは詠んでいません。
芭蕉の時代には春とともにお正月を迎えますから、薺や若菜などの句が新年に詠まれています。今でも七草粥にその名残りがあります。元日や二日と言った三が日の句も詠まれています。